新規に株式を公開して上場するIPOを目指しているのであれば、欠かせない存在ともいえるのがIPO支援(IPOコンサルティング)です。
ただ「IPO支援とは?」「必ず利用しなければならないの?」といった疑問を抱えている方もいるでしょう。
そこで、IPO支援について知りたい方のため、押さえておきたい基本や必要性、種類などを解説します。この記事を読むことによってIPO支援を利用するメリット・デメリットなどがわかるので、ぜひ参考にしてみてください。
IPO支援(IPOコンサルティング)とは?
まず、IPOとは「Initial Public Offering」を略したものであり、日本語でいうと「新規公開株式」や「新規上場株式」です。
IPOによって上場することで、一般の投資家はその会社の株を自由に売買できるようになります。
企業にとっては資金調達力や社会的信用度・知名度を向上させるなどの目的でIPOを行う形です。そのIPOを実現するための支援を行う専門家が「IPO支援(IPOコンサルティング)」と呼ばれる存在です。
IPOに向けて準備しなければならないことは多々あります。それらをすべて自社のみで調べ、対応していくのは簡単なことではありません。
自社だけで対応しようとすると、準備に予想以上の時間がかかることがあります。
こうした課題を解決するため、IPO支援を活用してIPOの実現を目指すことが重要です。
IPO支援はなぜ必要なのか?
IPOは、単純に株式市場に対して上場を申し出るだけでは認められません。専門的な手続きが必要となり、長期間にわたって審査通過に向けた準備も必要です。
IPOを検討している企業だけで対応するのは難しい部分もあることから、基本的にはIPO支援を受けることとなります。
IPO支援(IPOコンサルティング)は、専門的な知識を活用して企業をサポートする役割を果たします。
仮にIPOの審査を通過できなかった場合、企業は予定していた株式による資金調達ができなくなってしまうため、大きな問題となってしまいます。これを防ぎ、審査の通過率を高めるためにも、IPO支援は非常に重要と言えます。
また、IPOについて考える際は、審査に通過するための書類作成や準備だけではなく、上場後の運用に関するところまで含めて検討しておかなければなりません。長期的な戦略を立てていくことになりますが、そのために必要な知識や経験は、会社の経営とは全く異なるものです。
IPOに関する専門家ともいえるIPO支援に相談しながら効率よく進めていくことをおすすめします。
IPO支援・コンサルティングの種類
IPO支援・コンサルティングは、大きく分けて「証券会社系コンサル」と「会計士系コンサル」の2種類です。
それぞれの特徴を解説します。
なお、自社にとってどちらが向いているかを判断する際には、IPOを目指すにあたり、どのような支援を重視したいのかによって異なります。IPO支援・コンサルティングはIPOを実現できるかどうかを左右する大切なパートナーになるので、慎重に選ばなければなりません。
証券会社系コンサル
証券会社系コンサルは、株式市場や投資家に関連した知識・情報を持つ証券会社が支援するコンサルタントです。
証券会社系コンサルの特徴として、取引所目線での知見を有している点が挙げられます。
そのため、審査を通過するために必要な引受審査や上場審査といった専門的な情報を得ることが可能です。
例えば、現在の株式市場の動向を分析し、投資家目線で見た際のニーズについてアドバイスを提供します。
IPOを目指すにあたって用意しなければならない書類は多くありますが、書類にはとにかく自社の情報を詰め込めば良いわけではありません。証券会社系コンサルは審査する側の基準について理解していることから「要点を押さえた形で書類を作成するにはどうすれば良いのか」というアドバイスも可能です。
会計士系コンサル
会計士系コンサルは、主に監査法人出身者が多く在籍しているのが特徴です。そのため、特に内部統制や決算開示体制といったものの整備に関する知識に長けています。
一口に会計士系コンサルといっても、業務の代行やサポートに対応している会社もあれば、アドバイスのみを行う会社もあるので、選ぶ際は自社に合った方を選択するように注意しましょう。
会計士系コンサルは、財政を健全化し、経営を透明化するためにはどうすれば良いかというアドバイスも可能です。上場後も継続して適切なアドバイスを受けられるコンサル会社を選びたいと考える場合にも適しています。
IPO支援の業務内容について
IPO支援に対してどのような業務を依頼できるのでしょうか。基本的にIPOに関して総合的なサポートを受けることが可能です。
例えば、以下のような業務が含まれます。
【IPO支援の対応業務一例】
- IPOに向けたスケジューリング支援
- 審査を受けるのに必要な書類の作成と指導
- 審査資料や財務状況・決算開示に関するアドバイス
- 内部管理状況に関連した提案
- 主幹事証券会社、証券取引所といった上場審査関連の対応
- 審査時に行われる質問への回答支援・書類作成支援
- 上場後のファイナンス業務関連のアドバイス
対応範囲は、契約するIPO支援・コンサルティング会社によって異なります。自社が求めている支援がある場合は、対応しているかを事前に確認してください。
関連記事>>株式上場(IPO)前の最初に必要な準備は?
IPO支援を受けるメリット
IPO支援を受けることによってどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、代表的なメリットについて3つ解説します。
メリット①人的コストを削減できる
IPO支援を受けることにより、人的コストの削減が可能です。
もちろん、IPO支援・コンサルティング会社を利用しなくてもIPO支援が可能な人材を新たに雇用したり、既存社員をIPO支援が可能な形に教育したりすることも不可能ではありません。
しかし、新規に雇用する場合は採用コストがかかるほか、IPOを果たしたあとに任せられる業務が限定されてしまう恐れがあります。
また、既存社員を教育する方法に関しては時間とコストがかかるほか、必ずしも求めているレベルまで成長させられるとは限りません。
これらの理由から、一般的にはコンサルタントに依頼するケースが多いです。費用を抑える目的で自社対応を検討してしまうことがありますが、結果的にはじめから専門家によるIPO支援を受けておいたほうがIPOに関するコストを抑えられる可能性が高いです。
メリット②申告ミスや対応漏れを防げる
IPOに向けて取り組んでいくにあたり、避けなければならないのが申告ミスや対応漏れに関することです。
例えば、IPO準備段階で会計ミスや税金の申告漏れが発覚する可能性もあります。このような場合、審査をやり直す必要が生じることもあります。会計ミスや申告漏れが関連各社に知られると、大きく心証を損なう結果を防ぐことはできません。
これはうっかりミスであった場合も当然ながら同様です。
こういったトラブルを避けるためにも、専門的な目線でアドバイスしてくれるIPO支援を受けましょう。
メリット③プロの手を借りられる
IPO支援を行っているのは、専門的な知識を持ったプロです。これからIPOに取り組んでいこうと考えている企業の中には「そもそも何から始めれば良いのかわからない、何に注意すれば良いのかさえわからない」といったこともあるでしょう。
準備がうまくいかなければIPO審査を通過することができず、結果としてIPOを実現することができません。
ですが、IPO支援を活用して専門家の知識を取り入れながら準備に取り組んでいくことにより、審査の通過率を高めることが可能です。
IPO支援を受けるデメリット
効率的にIPOを目指すためにもぜひともIPO支援を活用していきたいところですが、利用するにあたり支援を受けるデメリットもあります。以下の2つのデメリットについて確認しておきましょう。
デメリット①想定以上のコストがかかる可能性がある
IPO支援を受ける以上、コンサルティング費用を支払わなければなりません。
もちろん契約の内容によっても異なりますが、非常にさまざまな業務を依頼できることもあり、費用は高額です。安くても数百万円、場合によっては数千万単位での費用がかかります。
そのため、これらの費用を用意できない場合は利用が難しいといえるでしょう。
また、当初予定していたよりも多額のコストがかかってしまう可能性もゼロではありません。追加コストがどのような場合に発生するのかを、事前によく確認して理解しておく必要があります。
なお、メリットの項目でコストを抑えられることについて触れたように、コスト面でいうと新規雇用や既存従業員の育成よりもコンサルティング費用のほうが安く抑えられる可能性が高いです。
IPOを実現するまでの一時的なコストとも言えます。
ただし、IPOのための準備期間としては、短くても3年以上かかるため、コンサルティング費用を支払えないためにIPOを諦めることになってしまったとなると大きな問題となります。どの程度の費用がかかるのかについては事前に確認しておきましょう。
デメリット②適切なコンサル支援を得られない可能性がある
IPO支援を受けたからといって、必ずしも自社で求めているコンサル支援を受けることができるとは限りません。
「費用や時間がかかっても最終的にIPOを実現できれば良い」という考えもありますが、適切なコンサルタントを選ばなかったためにIPOできないことも十分に考えられます。時間とコストを無駄にしないためにも、コンサルタントの選定は慎重に行う必要があります。
重要なのは、自社の状況を踏まえて適切な会社に依頼することです。
たとえば、紹介したようにIPO支援・コンサルティングの中でも会計士系コンサルの中には業務の代行は行っておらず、アドバイスのみ行う会社もあります。自社がIPOを目指す際に必要な知識が不足している場合、業務の代行やサポートに対応していない会計士系コンサルを選ぶと、準備がスムーズに進まない可能性があります。
どのコンサルティング会社に依頼するかは、自社でどこまで対応できるかも踏まえて検討する必要があります。
また、コンサルタントにはどういった部分をお願いしたいと考えているのかも明確にした上でコンサルタント選びをすることが重要です。選択するコンサルタントによってこれまで積み重ねてきた経験や対応力も異なるので、慎重に選ぶことが重要です。
頼りになるIPO支援に相談しよう
いかがだったでしょうか。IPOを目指すにあたり重要な存在ともいえるIPO支援(IPOコンサルティング)について解説しました。利用するメリットやデメリット、押さえておきたいポイントなどをご理解いただけたかと思います。
IPO支援は企業のIPO成功を左右する重要な存在でもあるため、信頼できるIPO支援を選択することが重要です。
IPOに関してお困りのことがあれば、HRプラス社会保険労務士法人までご相談ください。これまで10年以上にわたりIPOの実現に関与してきた実績があります。長年にわたって蓄積してきた豊富な知見を活かして徹底的なフォローが可能です。
コラム監修者
特定社会保険労務士
佐藤 広一(さとう ひろかず)
<資格>
全国社会保険労務士会連合会 登録番号 13000143号
東京都社会保険労務士会 会員番号 1314001号
<実績>
10年にわたり、200件以上のIPOサポート
社外役員・ボードメンバーとしての上場経験
アイティメディア株式会社(東証プライム:2148)
取締役(監査等委員)
株式会社ダブルエー(東証グロース:7683)
取締役(監査等委員)
株式会社Voicy監査役
経営法曹会議賛助会員
<著書・メディア監修>
『M&Aと統合プロセス 人事労務ガイドブック』(労働新聞社)
『図解でハッキリわかる 労働時間、休日・休暇の実務』(日本実業出版社)
『管理職になるとき これだけはしっておきたい労務管理』(アニモ出版)他40冊以上
TBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』監修
日本テレビドラマ『ダンダリン』監修
フジTV番組『ノンストップ』出演
関連記事
-
2024.12.03
- IPO
-
2024.10.22
- IPO
-
2024.10.21
- IPO