人事労務を担当している方に向けて、派遣会社における同一労働同一賃金について解説します。
同一労働同一賃金について「どういう基準で判断すべき?」「どこまでが同一労働同一賃金の範囲となる?」などの疑問を抱く方も多いと考えられます。労働する企業が変わるシステムであるため、待遇の判断は簡単ではありません。
そこで今回の記事では、派遣会社の同一労働同一賃金について解説します。派遣会社が実施すべき対応や待遇の判断基準についても解説しています。取り組みを進める際の参考となるでしょう。
同一労働同一賃金とは?
「同一労働同一賃金」とは企業や団体に属する従業員が、雇用形態による待遇差を受けないようにするための法律です[1]。主にパートタイムやアルバイト、有期雇用労働者の待遇改善を目指しています。
同一労働同一賃金は、雇用形態による待遇差を解消し、労働者が柔軟な働き方を選択できる社会の実現を目指しています[1]。
同一労働同一賃金の待遇を決める方法
同一労働同一賃金で派遣社員の待遇を決める際には、「労使協定方式」と「派遣先均等・均衡方式」の2種類があります。派遣会社の派遣労働者については、派遣先ではなく派遣会社が待遇を決めなければなりません。
労使協定方式
「労使協定方式」とは、派遣会社における労使協定に基づく待遇の決め方です。
「労使協定方式」とは、派遣元において、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数代表者と一定の要件を満たす労使協定を締結し、当該協定に基づいて派遣労働者の待遇を決定する方式です。
つまり同じ業種の正規雇用労働者の平均賃金を基準とし、協定を結ぶことにより待遇が決められる方式となります。
エリア内の正規雇用労働者と同等の待遇を得られること、業務遂行への意欲や能力、経験によって待遇が改善される可能性があることがメリットです。
派遣先均等・均衡方式
「派遣先均等・均衡方式」では、派遣先の正規雇用労働者と同じ条件で待遇が決定されます。厚生労働省からは次のように定義される方式です。
「派遣先均等・均衡方式」とは、派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇を図る方式です。基本給、賞与、手当、福利厚生、教育訓練、安全管理等、全ての待遇のそれぞれについて、派遣先の通常の労働者との間に「不合理な待遇差」がないように待遇を決定することが求められます。
労使協定方式では、エリア内の他の企業も考慮して待遇を決定しました。しかし派遣先均等・均衡方式では、あくまでも派遣先の基準に準じた待遇が採用されます。
そのため派遣先企業の待遇がエリア内でも特に良い場合は、満足度が高くなる可能性もありますが、派遣先によっては十分な待遇が得られない場合もあります。
派遣会社が同一労働同一賃金に違反した場合は?
派遣会社が同一労働同一賃金に違反した場合、罰則や行政処分は規定されていません。
しかし同一労働同一賃金は、派遣会社に対する「義務」であることに変わりはありません。
こうした状況を踏まえ、派遣労働者の待遇について、派遣元事業主には、派遣先均等・均衡方式(派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇)または労使協定方式(一定の要件を満たす労使協定による待遇)のいずれかを確保することが令和2年4月より義務化されました。
義務である以上、派遣労働者の待遇を適正に整備することは、事業継続に不可欠といえます。
同一労働同一賃金で派遣元がとるべき対応
それでは、同一労働同一賃金において派遣会社が講じるべき対応について確認します。
対応1:労働者派遣契約の記載事項の追加
まずは労働者派遣契約の記載に、同一労働同一賃金に関する事項を追加してください。追加すべき事項は、以下の2点です[2]。
【追加事項】
- 派遣労働者の業務に対する責任の程度
- 労使協定方式の対象となる派遣社員に限定されるか否か
労働における責任の程度を明確にし、労使協定方式の対象か否かを明記する必要があります。
対応2:待遇に関する説明
続いては待遇に関する説明内容を見直す必要があります。もし賃金や賞与、福利厚生、そのほかの待遇など、不合理な待遇差がある場合は解消しなければなりません。
同一労働同一賃金では、派遣労働者に対して待遇差の内容や生じる理由について、説明しなければならない義務があります[3]。
もし待遇差について派遣労働者から質問があったなら、正当な理由を説明できるよう、あらかじめ回答を準備しておくことが求められます。
対応3:就業規則の変更時の配慮
就業規則を変更する際には、次の点に配慮する必要があります。就業規則を変更する際には、派遣労働者の代表である人物から意見をもらう必要が生じます。
「代表者」とは、派遣労働者の半分以上から代表であると認められる人物のことです。就業規則を変更する際には、派遣労働者側の意見を聴取する必要があります。
対応4:派遣先企業への通知内容の追加
派遣先企業への通知内容を追加することも必要な対応のひとつです。
同一労働同一賃金に準じる場合、派遣労働者は労使協定方式、派遣先均等・均衡方式のいずれかで労働契約を締結するようにします。そして派遣先企業に労働者を派遣するときは、協定対象の派遣労働者であるかの通知が必要となります。
対応5:派遣先管理台帳への項目追加
派遣先管理台帳には、以下の2項目を追加する必要があります。
【追加項目】
- 労使協定方式による契約を行った労働者であるか否か
- 派遣労働者の派遣先における業務に伴う責任の程度
労働者派遣契約において追加されるものと同じ内容です。契約書だけでなく、派遣先管理台帳にも併せて記載する必要があります。
同一労働同一賃金で得られるメリット
最後に派遣会社と派遣労働者が、同一労働同一賃金で得られるメリットについてご紹介します。
派遣社員のメリット
まずは派遣労働者側にとってのメリットを確認します。
【メリット】
- 待遇が改善される
- モチベーションが高まる
- キャリアへの不安が軽減される
- 働き方の選択肢が増える
待遇の改善により、キャリアへの不安が軽減され、モチベーション向上にもつながります。
また待遇改善によって、「非正規雇用労働者として働く」ことも選びやすくなり、働き方の選択肢も広がります。
派遣会社のメリット
派遣会社にとっても多くの利点があります。
【メリット】
- 派遣労働者からの印象が向上し人材確保につながる
- 社会的信用度が高まる
- 派遣労働者全体のスキルアップが期待できる
- 業績向上が見込める
派遣会社が同一労働同一賃金を意識すると、社会的信用度が高まったり印象が向上したりして、人材を確保しやすくなります。
またスキルの高い労働者が派遣会社に登録することも多くなり、人材確保のしやすさと相まって、業績の向上も期待されます。
同一労働同一賃金は派遣会社においても意識すべき
いかがでしたでしょうか?この記事を読んでいただくことで、派遣会社における同一労働同一賃金についてご理解いただけたと思います。同一労働同一賃金を意識することにより、派遣会社にとっても派遣労働者にとってもメリットが感じられるでしょう。
HRプラス社会保険労務士法人では数々の上場企業顧問の実績を活かし、派遣会社への同一労働同一賃金のアドバイスも行っております。取り組みについて悩んでいることがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。 [1]
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コラム監修者

特定社会保険労務士
佐藤 広一(さとう ひろかず)
<資格>
全国社会保険労務士会連合会 登録番号 13000143号
東京都社会保険労務士会 会員番号 1314001号
<実績>
10年以上にわたり、220件以上のIPOサポート
社外役員・ボードメンバーとしての上場経験
※2024年支援実績:労務DD22社 東証への上場4社
アイティメディア株式会社(東証プライム:2148)
取締役(監査等委員)
株式会社ダブルエー(東証グロース:7683)
取締役(監査等委員)
株式会社Voicy監査役
経営法曹会議賛助会員
<著書・メディア監修>
『M&Aと統合プロセス 人事労務ガイドブック』(労働新聞社)
『図解でハッキリわかる 労働時間、休日・休暇の実務』(日本実業出版社)
『管理職になるとき これだけはしっておきたい労務管理』(アニモ出版)他40冊以上
TBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』監修
日本テレビドラマ『ダンダリン』監修
フジTV番組『ノンストップ』出演