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公開日:2025.03.31

更新日:2025.03.31

中小企業でのコンプライアンスの概要と違反防止のための取り組み例

人事労務担当の方に向けて、中小企業におけるコンプライアンスについて解説します。

近年、コンプライアンス違反は企業の存続や信頼性に大きな影響を及ぼすリスクの一つとなっています。しかしコンプライアンスを強化しようとしても、どのように対応すべきか、何が違反に該当するのか疑問に感じる方も少なくありません。

そこで今回の記事では、中小企業において起こりやすいコンプライアンス違反と対策法について解説します。 参考にしていただければ、これからの体制を整備していく際の参考として役立つはずです。

そもそもコンプライアンスとは?

「コンプライアンス」とは、一般的に「法令遵守」のことであると認識されています。しかし最近では「社内規定の遵守」「社会倫理の遵守」の意味も含まれるようになってきました。

つまり、社会において人として遵守すべき規範を守ることを指します。

コーポレートガバナンスとの違い

「コーポレートガバナンス」と「コンプライアンス」の違いは、「仕組み」であるか「目的」であるかにあります。

コーポレートガバナンスとは企業統治のことです。株主や従業員、顧客、取引先、地域社会に対して、透明・公正・迅速・果断な意思決定を行うための企業の仕組みです[1]。 対してコンプライアンスは法令遵守のことです。

両者は企業の健全な運営を目指す点で共通しています。しかしコーポレートガバナンスは、コンプライアンスを実現するための仕組みである点が相違点です。

CSRとの違い

「CSR」と「コンプライアンス」の違いは、尊重するべきことの範囲の広さです。

CSRは企業の社会的責任のことを指しており、次のように多岐にわたる配慮を求めます[2]。

【CSRの範囲】

  • 社会的な公正さ
  • 環境への配慮
  • 従業員や投資家、地域社会への責任ある行動と説明責任

最近ではコンプライアンスにも、倫理や良識などの社会的な意味も含まれてきました。しかしあくまでも法令を遵守することが第一の目的です。

CSRでは、人だけでなく人権や社会、環境への配慮も求められるため、対象範囲が広くなります。

コンプライアンスは企業内部で完結する傾向があり、この点がCSRとの大きな違いです。

コンプライアンス違反とは?

それではコンプライアンス違反とはどのようなことを指すのか、具体的な例をあげながら解説していきます。

1.情報漏洩

ひとつめは「情報漏洩」です。個人情報の漏洩はもちろん、企業の機密情報が漏れてしまうことも情報漏洩にあたります。

コンプライアンスは法令遵守のことであるため、「個人情報の保護に関する法律」も遵守しなければなりません。

特に顧客の個人情報が漏洩してしまうと、企業の信頼が失われるだけでなく、顧客も損失を受けることになるでしょう。

情報漏洩は中小企業で発生しやすいコンプライアンス違反の一つであり、未然に防ぐためには細心の注意が求められます。

2.景品表示法違反

「景品表示法違反」もコンプライアンス違反でよく見られます。

景品表示法とは、商品やサービスの価値を過大に表現し割高にするなどして、消費者への不利益を与えることを避ける法律です[3]。

たとえばブランド牛の名前を記載することにより、商品であるホルモンのすべてがブランド牛の内臓であると誤認させた例などがありました[4]。

無意識のうちに行ってしやすい景品表示法違反は、中小企業において多いコンプライアンス違反と言えます。

3.不正会計

「不正会計」を行うこともコンプライアンス違反のひとつです。粉飾決済、損失隠蔽などがよく見られます。

KPMG(2009)では、米国の大手企業約 200 社の経営層を対象としたインタビューの結果、不正を引き起こす主な要因として以下の事項を挙げている。 ① 不十分な内部統制やコンプライアンス・プログラム(66%) ② 内部統制に優先する者の存在(47%)

出典:金融庁:(PDF)不正会計の早期発見に関する海外調査・研究報告書

発生原因の66%は、内部統制やコンプライアンス体制の不備に起因するとの報告もあります。コンプライアンスを徹底することにより、不正会計を防ぎやすくなり、ひいては企業を守ることにもつながるでしょう。

4.不正受給

「不正受給」もコンプライアンス違反となるため十分に注意してください。

不正受給とは、偽りの申告を行うことにより助成金や補助金を受けることを指します。

コンプライアンス違反に該当するだけでなく、詐欺罪に該当する可能性もあり、決して行ってはならない行為です。

中小企業がコンプライアンス違反を起こした場合の影響

中小企業がコンプライアンス違反を起こした場合には、直接的および間接的に以下のような影響が及ぶ可能性があります。

【直接的影響】

  • 逮捕、書類送検、懲役、罰金などの刑事処分
  • 営業停止、課徴金の納付命令などの行政処分
  • 損害賠償請求や株主代表訴訟などの民事裁判

【間接的影響】

  • 報道、ネットでの情報拡散による信頼性の失墜
  • 取引先との契約解除
  • 消費者の離反
  • 株価の下落
  • 従業員の退職、不足

コンプライアンス違反による影響には、刑事処分や行政処分などの直接的なものも含まれます。しかし情報が拡散されることによる信頼性の失墜や契約解除・消費者の離反による経営状況悪化など間接的影響も考えられるでしょう。

また従業員が退職したり、求人への応募数が少なくなったりなど、人材の不足もあるかもしれません。 中小企業にとって、コンプライアンス違反は企業の存続を脅かす事態につながるおそれがあります。

中小企業でコンプライアンス違反が起こる原因

中小企業でコンプライアンス違反が起こる原因は、企業内での知識の不足や体制の整備が不十分であることに起因します。

まず大企業に比べて、中小企業では、コンプライアンスを徹底するための体制や仕組みが整っていないことが多く見受けられます。不十分である理由はさまざまですが、企業内での知識の欠如も原因のひとつでしょう。

また、経営者が現場を把握していない、あるいは現場との距離が近すぎて問題が曖昧になることも要因と考えられます。

つまりコンプライアンス違反が引き起こされるのは、コンプライアンス違反をチェックする体制が不十分であることが大きな要因です。

中小企業で起こり得るコンプライアンス違反と対策

それでは中小企業で生じることがあるコンプライアンス違反と対策について具体的に見ていきましょう。

1.長時間労働・サービス残業

長時間労働やサービス残業は、中小企業で特に発生しやすいコンプライアンス違反の一つです。

労働時間や休日労働は労働基準法によって上限が定められており、[5]1か月あたり45時間、年間360時間が上限とされています[5]。また時間外労働には、条件に合わせた割増賃金を支払う必要があります[6]。

対策

労働基準法違反とならないためには、労務管理を厳格に行わなければなりません。労働管理システムを導入するなどの対策を行い、従業員の労働時間を把握してください。 もちろん、労働に見合った賃金を払うことも基本です。

2.従業員の心身の健康を阻害する業務

従業員の心身の健康を阻害する業務を与えることも、中小企業において見られるコンプライアンス違反です。

たとえば長時間労働を含め、危険性の高い仕事やストレスの多い仕事があげられます。

対策

対策としては、「働きやすい職場かどうか」の視点から、労働環境の改善が求められます。一人ひとりの従業員への労働の荷重や時間を減らし、従業員が無理なく働ける環境の整備に努めましょう。

3.ハラスメント

セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントも、コンプライアンス違反に該当します。 2022年4月から、パワーハラスメント防止措置が義務化されました[7]。企業内におけるハラスメントへの対応は、事業主に課された義務です。そのためもしも発生すればコンプライアンス違反となります。

対策

ハラスメントを防ぐには、対策として社内ルールの整備や、相談窓口の設置が有効です。 またハラスメントを行った従業員に対して、違反者への適切な措置や禁止事項の周知も重要な対策です。

中小企業で実施できるコンプライアンス強化の取り組み

最後に、中小企業で実施できるコンプライアンス強化の取り組みについてご紹介します。

取り組み1:就業規則・行動規範の策定

まずは就業規則や行動規範を策定しましょう。 コンプライアンス違反を防ぐには、全従業員に対して行動規範を明示する必要があります。どのように考え、行動すべきか明確にしてください。

取り組み2:全社への周知

就業規則や行動規範を策定したら、内容を全社に向けて周知します。パンフレットやガイドラインを作成して、すべての従業員が内容を理解できるようにする必要があります。

取り組み3:研修の実施

コンプライアンスをより強化するためには、研修の実施が効果的です。

すべての従業員を参加させ、遵守すべき法令や企業倫理について適切に説明することが求められます。

講師として外部から専門家を招くのも良い方法でしょう。 コンプライアンス意識を高めるには、定期的な研修の実施が効果的です。

取り組み4:窓口の設置

コンプライアンス違反を報告や相談ができる窓口を設置することも有効な対策となります。早期の報告を促せる環境を整えることで、企業側の対応も円滑に進めやすくなるでしょう。

中小企業ではコンプライアンス違反を未然に防ぐ努力を

いかがでしたでしょうか?この記事を読んでいただくことで、中小企業におけるコンプライアンスについてご理解いただけたと思います。

コンプライアンス違反が発生すると、取引契約の中止や消費者からの信頼度の失墜、行政処分などさまざまな影響が及ぶでしょう。

HRプラス社会保険労務士法人ではスタートアップ企業・中小企業・上場企業と幅広く顧問を行っております。もしコンプライアンス強化にお困りでしたら、お気軽にお問い合わせください。 [1]

参照:金融庁:(PDF)コーポレートガバナンス・コード

[2]

参照:厚生労働省:CSR(企業の社会的責任)

[3]

参照:消費者庁:景品規制の概要

[4]

参照:消費者庁:(PDF)景品表示法における違反事例表

[5]

参照:厚生労働省:(PDF)時間外労働の上限規制わかりやすい解説

[6]

参照:厚生労働省:(PDF)しっかりマスター労働基準法-割増賃金編-

[7]

参照:厚生労働省:(PDF)職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!

コラム監修者

特定社会保険労務士

佐藤 広一(さとう ひろかず)

<資格>

全国社会保険労務士会連合会 登録番号 13000143号

東京都社会保険労務士会 会員番号 1314001号

<実績>

10年以上にわたり、220件以上のIPOサポート
社外役員・ボードメンバーとしての上場経験
※2024年支援実績:労務DD22社 東証への上場4社
アイティメディア株式会社(東証プライム:2148)
取締役(監査等委員)
株式会社ダブルエー(東証グロース:7683)
取締役(監査等委員)
株式会社Voicy監査役
経営法曹会議賛助会員

<著書・メディア監修>

M&Aと統合プロセス 人事労務ガイドブック』(労働新聞社)
図解でハッキリわかる 労働時間、休日・休暇の実務』(日本実業出版社)
管理職になるとき これだけはしっておきたい労務管理』(アニモ出版)他40冊以上

TBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』監修
日本テレビドラマ『ダンダリン』監修
フジTV番組『ノンストップ』出演