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公開日:2024.06.28

更新日:2014.07.07

税理士資格を有しない職員に専門業務型裁量労働制は適用されるか?

日々、実務の現場に接していると、「むむむ???」と意外と迷ってしまう法律的解釈があります。
たとえば、専門業務型裁量労働制の適用対象業務として「税理士の業務」があります。税理士がその対象となることは一目瞭然ですが、その事務所に勤務する資格を持たない職員はどうでしょう?業務としては「税理士業務」を遂行していることも多いはずです。

これを巡って裁判が起こりました。
この事件は、株式会社レガシィ及び税理士法人レガシィ双方に雇用されていた税理士の補助業務者である職員が、専門業務型裁量労働制は適用されないとして、時間外割増賃金等の支払いを求めたものです。

裁判所は、「税理士の業務」が専門業務型裁量労働制の対象とされた趣旨は、税理士が法律上の国家資格として専門性が確立していると考えられることに着目したものであるから、専門業務型裁量労働制の対象業務となる「税理士の業務」とは、税理士法3条所定の税理士となる資格を有し、同法18条所定の税理士名簿への登録を受けた者自身を主体とする業務というと解するのが相当である、としました。

税理士法人側は、専門業務型裁量労働制の対象となる業務の範囲については、その業務を行う手段や時間配分の決定などについて使用者が具体的な指示をすることが困難な業務か否かという観点から実質的に解釈すべきであると、主張していました。

しかし、裁判所は「そのように解釈すれば『税理士の業務』という概念の外延は曖昧となり、対象業務の明確性が損なわれ、専門業務型裁量労働制がその対象業務を限定列挙方式とした趣旨が没却されることとなり相当ではない」と断じています。

当たり前と言ったら当たり前なのですが、税理士資格を持たない職員であったとしても、税務申告以外のほとんどは税理士と遜色ない業務に従事している現場を知っていると、改めて「なるほど!」と考えさせられます。もっというと、税理士資格を持っていても登録をしていなければ対象とならない、ということも少し意外な感じがしたのでした。

レガシィほか事件(東京高裁 平成26.2.27判決)

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