• コラム

公開日:2024.06.28

更新日:2021.05.27

夫婦共働きの場合の健康保険の被扶養者の認定基準

今回は夫婦共働きの場合の健康保険の被扶養者の認定基準についてお話します。

被扶養者の認定基準って?

そもそも被扶養者の認定基準ってなに?という方もいらっしゃるでしょう。
被扶養者とは、被保険者に扶養されている家族で、主として被保険者の収入により生計を維持されている人のことです。家族なら誰でも被扶養者になれるというものではなく、法律などで決まっている一定条件を満たすことが必要です。
被扶養者として認定をされると、病気・けが・死亡・出産について健康保険の給付を受けることができます。認定を受けるには、対象となる家族が「被扶養者の範囲」であり、かつ「収入の基準」を満たす必要があります。

被扶養者の範囲

まずは対象の家族が決められている被扶養者の範囲の家族なのかどうかを確認します。同居が要件となっている家族と、そうではない家族の範囲がありますのでご注意ください。

(1)同居の要件なし
被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人

(2)同居の要件あり
被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
※「同一の世帯」とは、同居して家計を共にしている状態をいいます。
①被保険者の三親等以内の親族(上記(1)に該当する人を除く)
②被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
③②の配偶者が亡くなった後における父母および子

収入の基準

対象の家族が被扶養者の範囲であることが確認できたら、次は収入の基準をクリアしているかどうかを確認します。こちらも同居の有無によって基準が異なります。

(1)認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合
なお、上記に該当しない場合であっても、認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入を上回らない場合には、その世帯の生計の状況を果たしていると認められるときは、被扶養者となる場合があります。

(2)認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合
※自営業を営んでいる認定対象者の年間収入の算定は、収入から控除できる経費は事業所得の金額を計算する場合の必要経費とは異なりますのでご留意ください。
(控除できる経費の例…売上原価、種苗費、肥料費等/控除できない経費の例…減価償却費等)

以上のように、「被扶養者の範囲」に収まっていて、かつ「収入の基準」をクリアしている家族は被扶養者の認定を受けることができます。
では、夫婦共働きの場合、「被保険者の収入により生計を維持されていること」はどのように考えればよいのでしょうか?これまでも収入の多い方に入れてください、というルールがありましたが、今回その基準が明確になりました。
前置きが長くなりましたが、今回のトピックスである夫婦共働きの場合の認定基準についてご説明します。

夫婦共働きの場合の被扶養者の認定基準って?

厚生労働省から「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について(令和3年4月30日保保発0430第2号・保国発0430第1号)」が公表されました(令和3年5月12日公表)。
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc5892&dataType=1&pageNo=1

これまで、夫婦共働きの場合における被扶養者の認定については、「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」(昭和60年6月13日付け保険発第 66 号・庁保険発第22号通知。)をもとに判断されてきました。昭和60年、今から約35年前に定められたルールです。35年前と現在とでは働き方が全く違います。総務省「労働力調査特別調査」、「労働力調査(詳細集計)」によると、1980年(昭和55年)から2020年で夫婦共働き世帯は600万世帯から1219万世帯へ倍増しています。その結果、かつては男性の方が収入が高いことが多かったのですが、昨今は収入がほぼ同じくらいの夫婦が増えてきました。その影響として、たとえば子どもが生まれた場合、夫婦それぞれの保険者間でどちらの被扶養者とするかを調整している間、対象の子どもが無保険状態となり、医療機関にかかった際、一時的に10割負担をしなければならない、という状況が発生することもあり、このようなことがないように被扶養認定の具体的かつ明確な基準を策定することが付されました。

新しい認定基準のポイントは以下の通りです。

・夫婦とも被用者保険の被保険者の場合には、以下の取り扱いとする。

(1) 被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。以下同じ。)が多い方の被扶養者とする。
(2) 夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。
(3) 夫婦の双方又はいずれか一方が共済組合の組合員であって、その者に被扶養者とすべき者に係る扶養手当又はこれに相当する手当(以下「扶養手当等」という。)の支給が認定されている場合には、その認定を受けている者の被扶養者として差し支えない。なお、扶養手当等の支給が認定されていないことのみを理由に被扶養者として認定しないことはできない。
(4) 被扶養者として認定しない保険者等は、当該決定に係る通知を発出する。当該通知には認定しなかった理由(年間収入の見込み額等)、加入者の標準報酬月額、届出日及び決定日を記載することが望ましい。被保険者は当該通知を届出に添えて次に届出を行う保険者等に提出する。
(5) (4)により他保険者等が発出した不認定に係る通知とともに届出を受けた保険者等は、当該通知に基づいて届出を審査することとし、他保険者等の決定につき疑義がある場合には、届出を受理した日より5日以内(書類不備の是正を求める期間及び土日祝日を除く。)に、不認定に係る通知を発出した他保険者等と、いずれの者の被扶養者とすべきか年間収入の算出根拠を明らかにした上で協議する。この協議が整わない場合には、初めに届出を受理した保険者等に届出が提出された日の属する月の標準報酬月額が高い方の被扶養者とする。標準報酬月額が同額の場合は、被保険者の届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。なお、標準報酬月額に遡及訂正があった結果、上記決定が覆る場合は、遡及が判明した時点から将来に向かって決定を改める。
(6) 夫婦の年間収入比較に係る添付書類は、保険者判断として差し支えない。

・夫婦の一方が国民健康保険の被保険者の場合には、以下の取扱いとする。

(1) 被用者保険の被保険者については年間収入を、国民健康保険の被保険者については直近の年間所得で見込んだ年間収入を比較し、いずれか多い方を主として生計を維持する者とする。
(2) 被扶養者として認定しない保険者等は、当該決定に係る通知を発出する。当該通知には、認定しなかった理由(年間収入の見込み額等)、届出日及び決定日を記載することが望ましい。被保険者は当該通知を届出に添えて国民健康保険の保険者に提出する。
(3) 被扶養者として認定されないことにつき国民健康保険の保険者に疑義がある場合には、届出を受理した日より5日以内(書類不備の是正を求める期間及び土日祝日を除く。)に、不認定に係る通知を発出した被用者保険の保険者等と協議する。この協議が整わない場合には、直近の課税(非課税)証明書の所得金額が多い方を主として生計を維持する者とする。 ・その他
(1) 主として生計を維持する者が健康保険法に定める育児休業等を取得した場合、当該休業期間中は、被扶養者の地位安定の観点から特例的に被扶養者を異動しないこととする。ただし、新たに誕生した子については、改めて上記1又は2の認定手続きを行うこととする。
(2) 年間収入の逆転に伴い被扶養者認定を削除する場合は、年間収入が多くなった被保険者の方の保険者等が認定することを確認してから削除することとする。

いつから?

この新しい基準は令和3年8月1日から適用となります。
以降の認定に関してはこの基準をもとに行われますので、人事の方は一度目を通しておいていただくとよいかと思います。

今回は、夫婦共働きの場合の健康保険の被扶養者の認定基準についてご紹介しました。実はつい最近も私はクライアントからこのような質問を受けたばかりです。昭和60年通知を読んだ上で、年金事務所に確認し回答をしましたが、今回で非常にわかりやすくなった印象があります。また、その他の(1)についての質問も多いので、取り扱いが明確になってよかったなと思っています。

 

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参考
協会けんぽ
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat710/sb3160/sbb3163/1959-230/

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