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公開日:2024.06.28

更新日:2014.03.10

東日本大震災による津波事故に対し安全配慮義務違反が認められた判例

明日、東日本大震災から3年となります。
私も一昨年、石巻や女川を訪れてその惨状を目の当たりにしましたが、たくさんの尊い命が失われたことを考えるとやりきれない思いになります。とりわけ、未来に夢と希望にあふれている多くの子供たちが命を落としたことに、私も一人の親として本当に胸が痛むのです。

この震災によって発生した津波によって、子供たちが乗車した幼稚園バスが横転し、またその後発生した火災にも巻き込まれるなどして亡くなった事故がありました。遺族は、幼稚園側に対して、安全配慮義務を怠ったとして債務不履行、ないし不法行為に基づき損害賠償を求め、訴えを提起しました。

裁判所は、その前提として、幼稚園設置者は、被災園児らの生命・身体を保護する義務を負っていたこと、園長も、一般不法行為法上、同様の義務を負っていたことを示したうえで、園長及び教諭ら職員は、できる限り園児の安全にかかわる自然災害等の情報を収集し、自然災害発生の危険性を具体的に予見し、その予見に基づいて被害の発生を未然に防止し、危険を回避する最善の措置を執り、在園中または送迎中の園児を保護すべき注意義務を負うとしています。

そして、園長は、送迎バスを出発させるにあたり、たとえ地震発生時までにいわゆる千年に一度の巨大地震の発生を予想しえなかったとしても、約3分間にわたって続いた最大震度6弱の巨大地震を実際に体感したのであるから、送迎バスを海沿いの低地帯に向けて発車させて走行させれば、その途中で津波により被災する危険性があることを考慮し、ラジオ放送などによりどこが震源地であって、津波警報が発令されているかどうかなどの情報を積極的に収集し、サイレン音の後に繰り返される防災行政無線の放送内容にもよく耳を傾けてその内容を正確に把握すべき注意義務を負っていたところ、その情報収集義務を怠っている。

また、園長の情報収集義務懈怠がなければ、園児らの尊い命が失われることもなかったであろうといえるから、園長の情報収集義務懈怠と園児らの死亡の結果発生との間には相当因果関係があるとしています。

以上により、裁判所は、幼稚園設置者には安全配慮義務違反の債務不履行責任及び民法第715条1項の不法行為による損害賠償責任があり、園長には民法第709条の不法行為による損害賠償責任があると判断しています。(震災・津波による事故に基づく損害賠償事件 仙台地裁平成25.9.17判決)

この判例は、学校法人や介護施設などに対し「尊い人命を預かっている重い責任」を今一度、強く再認識させるに十分なものだと感じます。

最後に改めて、東日本大震災でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りし、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。

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