今回は、海外赴任者と薬をテーマにお伝えしたいと思います。海外赴任して医療機関にかかる際には、注意が必要になることがありますので、参考にしてください。
向精神薬について
海外出張や赴任者の中で、うつ病、不安障害、睡眠障害が罹患歴のある方を出そうとする場合、寛解ないし完治で、投薬治療を行なっていないか、事前に確認を行うようにしてください。
抗うつ病の処方薬、睡眠導入剤、抗不安剤については、ほとんどの国でほぼ例外なく、許可証なく、手持ち・別送での持込による輸入が禁止されています。手持ち持込を行う場合は、別室での入国審査が行われる場合がありますので、無用なトラブルを避けるため、渡航先国大使館へ許可証の要否、規制状況の確認をして下さい。
国によっては覚せい剤・麻薬と同様の厳しい取り締まりを行なっておりますので、要注意です。(本邦でも処方用向精神薬は麻薬及び向精神薬取締法の規制により医療機関等では施錠できる金庫での保管、報告が義務付けられており、個人での輸出入は規制対象です。)
大麻(マリファナ)の吸引等について
一部の国では、大麻(マリファナ)等のソフトドラッグが合法化されていますが、海外赴任をされる方に、合法国に行ったからといって、絶対に手を出さないように渡航される従業員の方へ興味本位で手を出さないよう注意喚起、使用禁止規程を定めておくとよいでしょう。
大麻については、カナダでは全州で昨年10月から、オランダやオーストラリアの一部の州などで少量の嗜好品として、所持、吸引が合法となっていますが、日本人が合法国で使用したことが判明した場合、大麻取締法第24条(使用と所持の規制)と刑法第2条(国民の国外犯)の規程により、帰国後、刑罰を受けることとなります。
海外で頭痛等の鎮痛剤を処方された場合
海外の医療機関、特にアメリカ合衆国やカナダ等で医療機関を受診して、鎮痛剤を処方された場合、薬の成分について、注意が必要となります。鎮痛剤としてオピオイド(医療用麻薬成分)を配合した鎮痛剤が割と簡単に処方される状況で、処方数が社会問題となるほどです。鎮痛剤の中に医療用麻薬が含まれていないか確認をしてください。
日本とは違い、医療用麻薬の投薬コントロールの緩い国では、がん治療の緩和ケア(末期がんの疼痛緩和)に使用されるだけでなく、頭痛薬や腰痛緩和剤等として医療用麻薬が割とすぐに処方されます。
帰国時に、麻薬取及び向精神薬取締法の点で事情聴取等がなされるケースもよくありますので、無用なトラブルを避けるため、従業員の方へ、医療機関を受診し、処方薬をもらう際に医療用麻薬該当成分を除外した成分の鎮痛薬をもらえるかという点について必ず確認すること、という点を伝えるようにしましょう。
まとめ
処方薬、嗜好品としての薬が渡航先国では合法であっても、日本では違法になるケースは多々あります。従業員と会社を守るために、海外赴任規程の作成時等でリスクヘッジの観点から今一度見直しをしてみてはいかがでしょうか。
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コラム監修者
特定社会保険労務士
佐藤 広一(さとう ひろかず)
<資格>
全国社会保険労務士会連合会 登録番号 13000143号
東京都社会保険労務士会 会員番号 1314001号
<実績>
10年にわたり、200件以上のIPOサポート
社外役員・ボードメンバーとしての上場経験
アイティメディア株式会社(東証プライム:2148)
取締役(監査等委員)
株式会社ダブルエー(東証グロース:7683)
取締役(監査等委員)
株式会社Voicy監査役
経営法曹会議賛助会員
<著書・メディア監修>
『M&Aと統合プロセス 人事労務ガイドブック』(労働新聞社)
『図解でハッキリわかる 労働時間、休日・休暇の実務』(日本実業出版社)
『管理職になるとき これだけはしっておきたい労務管理』(アニモ出版)他40冊以上
TBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』監修
日本テレビドラマ『ダンダリン』監修
フジTV番組『ノンストップ』出演
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