派遣労働者が雇用契約を締結するのは派遣元ですが、派遣労働者が実際に就労するのは派遣先であるため、派遣労働者に対するハラスメント行為は、派遣元だけでなく、派遣先でも発生する可能性があります。
派遣先で派遣労働者がセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントを受けた場合、派遣先においても当然対応する必要がありますが、派遣元においてはどのような対応が求められるのでしょうか。
ハラスメント防止義務
そもそも、労働者派遣法第47条の2および男女雇用機会均等法第11条第11項の定めにより、セクシュアルハラスメントの防止義務は、派遣先のみならず、派遣元も負うものとされています。
パワーハラスメントについても、労働者派遣法第47条の4および労働施策総合推進法第30条の2の定めにより、セクシュアルハラスメント同様、派遣先のみならず、派遣元においてもその防止義務を負うものとされています。
派遣元は、派遣労働者を雇用し、派遣労働者を派遣先に派遣します。他方、派遣先は派遣労働者に対して具体的な指揮命令をして就労させます。
このように、派遣元と派遣先では立場が異なるため、ハラスメントの防止義務については、派遣元と派遣先、それぞれが派遣労働者について措置義務および責務を別個に負うことになります。
派遣先でハラスメントが発生したら
派遣先で派遣労働者がハラスメントを受けた場合、派遣元もハラスメントの防止義務を負うとはいえ、実際に就労しているのは派遣先であるため、派遣元は物理的に監督できる状況にはありません。
派遣元が、派遣労働者から派遣先でのハラスメント被害の相談を受けた場合には、まずは適切に対応するために必要な体制を確立しましょう。
そのうえで、派遣元の立場で事実関係を迅速かつ正確に調査し、派遣先に働きかけることが求められます。派遣元は物理的に監督することはできませんが、派遣労働者からの相談に対して、何ら対応しないことは問題となります。
派遣元管理台帳への記録
また、派遣元は、派遣労働者から苦情を受けた場合、派遣元管理台帳に記録する必要がありますので、漏れずに対応しましょう。苦情の申出を受けた日付、苦情の内容、苦情の処理状況について、苦情の処理に当たった都度、記載する必要があります。
おわりに
いかがでしたか。
労働者派遣事業は、派遣元に雇用される派遣労働者が雇用主である派遣元ではなく、派遣先から指揮命令を受けて就労するという、特殊な形態です。
実際の就業場所である派遣先での派遣労働者の保護を図るために、適正な就業環境を確保していきましょう。
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コラム監修者
特定社会保険労務士
佐藤 広一(さとう ひろかず)
<資格>
全国社会保険労務士会連合会 登録番号 13000143号
東京都社会保険労務士会 会員番号 1314001号
<実績>
10年にわたり、200件以上のIPOサポート
社外役員・ボードメンバーとしての上場経験
アイティメディア株式会社(東証プライム:2148)
取締役(監査等委員)
株式会社ダブルエー(東証グロース:7683)
取締役(監査等委員)
株式会社Voicy監査役
経営法曹会議賛助会員
<著書・メディア監修>
『M&Aと統合プロセス 人事労務ガイドブック』(労働新聞社)
『図解でハッキリわかる 労働時間、休日・休暇の実務』(日本実業出版社)
『管理職になるとき これだけはしっておきたい労務管理』(アニモ出版)他40冊以上
TBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』監修
日本テレビドラマ『ダンダリン』監修
フジTV番組『ノンストップ』出演
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