今回のコラム「ハラスメントシリーズ」は、職場のパワーハラスメント対策として
・アンケートによる実態の把握
についてご説明いたします。
アンケート調査のメリット
アンケート調査を実施するメリットとしては、自社の実態が把握できることはもちろん、以下のことが挙げられます。
- パワハラを決して許さないという会社の姿勢を示す。
- 社員のパワハラに対する意識を高め、気づきを与える。
- アンケート結果を研修等で活用することで、今後の働きやすい職場づくりの検討材料となる。
これらのメリットをできる限り多く受けるためには、多くの社員から率直な回答を得ることが不可欠です。そのためには次の留意点を押さえてください。
アンケートの実施に当たっての留意点
(1)実施方法
外部委託で行うこともできますが、自社で実施することも可能です。自社で行う場合は①紙(調査票)を配布する ②メールでエクセルなど電子媒体を配布し、回収する ③インターネット上でアプリケーションサービスプロバイダーを利用する などがあります。社員数や費用効果などを考慮して自社に合った方法を決定するとよいでしょう。
(2)対象者
アンケート対象者については
①管理職のみ ②全社員
の2通りが考えられますが、社員数が少なければ、誰が答えたか特定できてしまうおそれもあり、統計上も数字の振れ幅が大きくなるため②で実施したほうが良いと思います。なお、派遣社員を対象に含める場合は、事前に派遣会社の理解を得るなど配慮が必要です。
(3)質問項目
質問項目としては、厚生労働省が実施している「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」の「従業員調査」の質問項目を活用することをおすすめします。
一から作るのは大変ですし、質問項目が少し多いので回答者の負担を軽減したいのであれば、一部省略しても構いません。また質問内容を会社の実態や状況に応じて修正しても良いでしょう。集計した結果を、世間水準と比較できるのもおすすめする理由です。たとえば、平成28年度実態調査で「あなたは過去3年間にパワハラを受けたり、見たり、逆にパワハラをしたり、していると指摘されたことはありますか。」という質問に対して、全体では32.5%が「ある」と回答しています。
参考 >> 厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します
(4)回収率を高めるには
以下の点が挙げられます。
- 匿名(無記名式)での実施。より正確な実態把握にも効果的です。
- 回答の秘密厳守。回収者以外が回答内容を見ることがないことを約束する。
- 実施時期に配慮。(たとえば毎年12月に人権週間があるのでそのタイミング)
- アンケート結果をフィードバックしたり、研修に活かすなど、会社としてパワハラ防止に役立てることをアンケートの依頼文に明記しておく。
アンケート結果の活用方法
アンケート調査による効果を得るためには、アンケート結果を分析し、自社の取組をどのように見直すかを検討し、従業員に見える形で例えば以下のような改善のための行動を実施することが必要です。
(1)アンケート結果を活用して社員研修を実施する
ハラスメント研修で「パワハラを受けたと感じた」と回答した社員比率を題材として「なぜパワハラが起こるのか?」「どのようにしたらパワハラを減らすことができるのか?」などをグループディスカッションし、社員自らがパワハラ防止対策を考える機会を設ける。
(2)トップメッセージとともに、調査結果をフィードバックする
前々回のこのコラムでも述べたとおり、トップのメッセージはたいへん有効な取り組みです。アンケート結果を受けて、トップがパワハラ防止対策を強く訴えることが、社員の意識改革、行動変容につながります。
(3)毎年アンケートを実施する
同じ内容のアンケートを毎年同じ時期に実施して、回答内容を分析し、会社のパワハラ防止対策が有効に進んでいるか(またはいないか)をチェックする。
最後に
アンケート実施の際に、ぜひアンケート依頼文やアンケート用紙に「ハラスメント相談窓口」を紹介してください。以下のような内容で十分かと思います。
(例文)
ハラスメントについてご相談やお悩みの方は、人事部や下記の相談窓口へご相談ください。
人事部:内線●●●
社内相談窓口:内線●●●
社外相談窓口:●●-●●●●-●●●●(●●弁護士事務所)
※人事部・相談窓口は、相談者の方の了解を得ることなく、行為者や上司等へのヒアリングを行うことは一切ありません。安心してご相談ください。
次回は、「社内研修」についてご紹介する予定です。
労務DDのご相談ならHRプラス社会保険労務士法人までお問い合わせください。
コラム監修者
特定社会保険労務士
佐藤 広一(さとう ひろかず)
<資格>
全国社会保険労務士会連合会 登録番号 13000143号
東京都社会保険労務士会 会員番号 1314001号
<実績>
10年にわたり、200件以上のIPOサポート
社外役員・ボードメンバーとしての上場経験
アイティメディア株式会社(東証プライム:2148)
取締役(監査等委員)
株式会社ダブルエー(東証グロース:7683)
取締役(監査等委員)
株式会社Voicy監査役
経営法曹会議賛助会員
<著書・メディア監修>
『M&Aと統合プロセス 人事労務ガイドブック』(労働新聞社)
『図解でハッキリわかる 労働時間、休日・休暇の実務』(日本実業出版社)
『管理職になるとき これだけはしっておきたい労務管理』(アニモ出版)他40冊以上
TBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』監修
日本テレビドラマ『ダンダリン』監修
フジTV番組『ノンストップ』出演
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