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公開日:2024.06.29

更新日:2014.01.07

同性間の言動でもセクハラ、均等法指針を改正
(平成26年7月1日施行)

厚生労働省は、平成25年12月24日に、職場のセクシャルハラスメントについて、男女雇用機会均等法の改正指針を公布しました。今回の改正では、同性間の言動もセクハラに該当することが盛り込まれています。たとえば、女性上司が女性の部下をしつこく食事に誘ったり、男性間で性的なからかいやうわさ話をしたりする行為がそれに該当します。管理職においては、部下のマネジメントに影響が大きいと考えらえる改正ですので本稿で取り上げておきたいと思います。

主な改正点は、①間接差別となり得る措置の範囲の見直し、②性別による差別事例の追加、③セクシャルハラスメントの予防・事後対応の徹底など、④コース等別雇用管理についての指針の制定の4点です。

(1)間接差別となり得る措置の範囲の見直し


表面的には中立的な慣行や基準に見えるものの、実質的に性差別につながる行為や慣行を「間接差別」といいます。厚生労働省は、間接差別につながる恐れがあるものとして省令で、コース別雇用管理における「総合職」の募集または採用において転居を伴う転勤に応じることを要件とすることはNGだとしています。今回の改正では、このうち「総合職」に限定しないことと、昇進・職種の変更も措置の対象に新たに加えることとされました。

(2)性別による差別事例の追加


性別を理由とする差別に該当するものとして、結婚していることを理由に職種の変更や定年の定めについて男女で異なる取扱いをしている事例を新たに追加することとなりました。

(3)セクシュアルハラスメントの予防・事後対応の徹底など

①職場におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれるものであることが新たに明示されることになりました。
②セクシュアルハラスメントに関する方針の明確化とその周知・啓発に当たっては、その発生の原因や背景に、性別の役割分担意識に基づく言動があることも考えられます。そのため、こうした言動をなくしていくことがセクシュアルハラスメントの防止の効果を高める上で重要であることが新たに明示されることになりました。
③セクシュアルハラスメントの相談対応に当たっては、その発生のおそれがある場合や該当するかどうか微妙な場合でも広く相談に応じることとされています。今回の改正ではその対象に、放置すれば就業環境を害するおそれがある場合や、性別役割分担意識に基づく言動が原因や背景となってセクシュアルハラスメントが生じるおそれがある場合などが含まれることが明示されることになりました。
④被害者に対する事後対応の措置の例として、管理監督者または事業場内の産業保健スタッフなどによる被害者のメンタルヘルス不調への相談対が新たに追加されました。

(4)コース等別雇用管理についての指針の制定


「コース等で区分した雇用管理についての留意事項」という通達を、より明確な記述とした「コース等で区分した雇用管理を行うに当たって事業主が留意すべき事項に関する指針」として制定されました。

これらの指針等の改正で私が特に気になるのは、(1)のコース別雇用管理における「総合職」の募集または採用において転居を伴う転勤要件から「総合職」を削除し、さらに昇進・職種の変更も措置の対象に新たに加えることになったことです。前述の通り、これによりすべての労働者の募集・採用、昇進、職種の変更に当たって、合理的な理由もなく、転勤要件を設けることは、間接差別に該当することになります。何故ならば、政府のその一方で、「限定正社員」の処遇の明確化を進めており、その中に「勤務地限定正社員」があります。これは勤務地をわざわざ限定することで、全国各地に転勤可能な「本当の正社員」と区別されることなりその線引きを一層色濃くするものです。その意味においては、今回の均等法指針改正と混同してしまうことが懸念されますので注意が必要でしょう。

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