• 人事労務

公開日:2024.06.29

更新日:2023.05.24

労務管理とは?労務の基本と注意点を徹底解説

会社を経営する際に労務管理は欠かせない業務です。

専門的な知識が求められる業務のため、具体的な業務範囲や注意点を把握できていない方もいるのではないでしょうか。

本記事では、労務管理の基本と役割、注意点について徹底的に解説します。労務まわりでお悩みの方はぜひ参考にしてください。

労務管理とは?

 

労務管理とは、従業員の雇用・教育・評価・報酬・労働環境など、人材管理に関する業務全般のことを指します。

従業員が仕事をしやすい環境を整え、生産性やモチベーションの向上を目指すことが大切です。

よく人事管理と混同されますが、管理する対象が異なります。人事管理は個人、労務管理は組織を管理します。

また、人事管理の対象は人材の採用や評価など従業員一人ひとりとなる一方で、労務管理は労働条件や就業規則など、組織として従業員を管理する点でも違いがあります。

労務管理については、専門家に業務を依頼するか、専用のソフトを使って管理、運用する方法があります。

どのように管理業務を進めるかは、自社が置かれている状況や予算などによって、どちらが適切か異なりますので、しっかり考えるようにしましょう。

労務管理の目的

労務管理の目的は、主に企業の生産性向上とリスク回避にあります。より具体的にいえば、以下のようなものがあげられます。

  • 従業員のモチベーションや生産性の向上を図る
  • 従業員の健康管理や安全対策を行い、労働災害を防止する
  • 従業員の能力開発やキャリアアップの支援を行い、長期的な雇用の安定を促す
  • 労働法規や労働契約、労働時間の管理を適切に行い、法令遵守を確保する

これらの目的を達成するためには、従業員とのコミュニケーションを密にし、問題を早期に発見し、改善することが重要といえるでしょう。

関連記事>>労働問題とは?労務に関するトラブルと対策方法を詳しく解説

労務管理の役割

労務管理の具体的な役割としては、以下のようなものがあります。

  • 従業員の雇用・教育・評価・報酬などの人事管理
  • 労働法規や就業規則の策定・運用、労働時間の管理
  • 福利厚生や労働環境の整備・改善
  • 安全衛生管理や健康管理などの労働災害予防
  • 従業員のキャリア開発やモチベーション向上のための研修・教育プログラムの企画・実施

これらの役割を担うことで、従業員の満足度や生産性を向上させ、企業の発展に貢献します。

労務管理の業務内容

 

労務管理における業務内容は、7つに分類されます。

具体的には、勤怠管理、給与・賞与計算、就業規則の作成、社会保険や雇用権の加入手続き、ハラスメント対策、従業員の健康管理、職場環境の改善です。

それぞれについて詳しく見てみましょう。

勤怠管理

勤怠管理は、従業員が出勤・退勤した時間や休暇の取得状況などを管理する業務です。

従業員が適切な時間帯に出勤しているか、遅刻・早退がないかなどを確認し、問題があれば適切に対処する必要があります。

また、勤怠管理は法律で定められた労働時間や休日の取得などに関する法令遵守のためにも重要な役割を担っています。

給与・賞与計算

給与・賞与計算は、従業員の給与・賞与の計算や支払いを行う業務です。

給与・賞与は、従業員が働いた時間や成果に応じて支払われるため、正確な計算が求められます。

また、社会保険や税金の控除なども考慮して計算する必要があります。控除額は、社会保険や所得税のような保険料、もしくは税金が対象です。控除した分については、税務署や年金事務所に納付しなければいけないので注意しましょう。

給与・賞与の計算には、企業によってさまざまなルールが設定されているため、専門知識が必要とされます。

就業規則の作成

就業規則は、企業が従業員に対して定めるルールや規定のことで、労働基準法に基づいて作成されます。

就業規則は、勤務時間や休暇の取得、福利厚生、行動規範などを明示することで、従業員の権利と義務を明確にします。

就業規則の作成には、法令や労働契約に関する知識が必要であり、労務管理者が行うことが一般的です。また、就業規則は変更されることもあるため、定期的に見直しを行うことが重要です。

社会保険や雇用保険の加入手続き

社会保険や雇用保険とは、生活するうえで発生する可能性があるあらゆるリスクに備えて加入する保険の総称です。

労務管理の業務には、この社会保険や雇用保険の加入手続きも含まれます。

社会保険には、健康保険、厚生年金保険、介護保険、労災保険があり、これらの保険に加入することで、従業員が病気やケガをした場合に備え、保険給付を受けられます。

また、従業員が出産・育児をした場合にも、給付を受けられるようになっています。

雇用保険には失業給付があるため、雇用保険に加入することで、従業員が失業した場合に備え、一定期間の間、失業手当を受け取ることができます。

また、職業安定所のサポートを受けることも可能となります。

ハラスメント対策

労務管理には、ハラスメント対策も含まれます。

ハラスメントには、パワハラ、セクハラ、マタハラ、モラハラ、ダイバーシティハラスメントなどさまざまな形態があります。

これらのハラスメントが発生すると、被害者は心身ともにダメージを受け、職場の雰囲気が悪化するだけでなく、離職率を引き上げる要因になりかねません。

従業員がハラスメントに遭わないためにも予防策を講じることが大切です。

例えば、ハラスメント防止の方針を策定し、従業員に周知することで、ハラスメントを未然に防ぐことができます。また、ハラスメントが発生した場合には、速やかに適切な処置を講じることが必要です。

従業員の健康管理

従業員の健康管理は、労働災害や健康管理に関する法令を遵守しながら、健康診断の実施や健康相談の受付など、従業員の健康をサポートする業務です。

従業員が健康的に働くことは、企業にとっても重要な課題です。労働災害が発生すると、業務の停止や賠償金の支払いなどの損失が発生することがあります。

そのため、従業員が安全に働けるように、労働災害の予防にも取り組んでいます。

また、ストレスチェックの実施も従業員の健康管理に欠かせません。

ストレスは、従業員の健康に悪影響を及ぼし、職場の雰囲気や生産性にも悪影響を与えることがあります。

ストレスチェックを行い、ストレスの原因を明らかにし、適切な対策を取ることで、従業員のストレスを軽減し、職場環境の改善につなげることができます。

職場環境の改善

労働者が働きやすい環境を整えることは、生産性の向上につながります。

職場環境の改善は、労働環境の改善や職場内の人間関係の調整、労働時間の見直しなどが含まれます。また、職場における安全管理や防災対策も、職場環境の改善には欠かせません。

労務管理は、企業にとって非常に重要な業務です。労働者が安心して働くことができる環境を整えることは、企業の発展にも直結しています。

法定三帳簿

 

労務管理において、法定三帳簿と呼ばれる帳簿の作成が必要となります。

法定三帳簿とは、労働基準法で定められている「労働者名簿」「賃金名簿」「出勤簿」のことを指します。

労働者名簿

労働者名簿とは、会社で働いている労働者の氏名、住所、生年月日、入社日、離職日等の個人情報を一覧にした帳簿です。

この帳簿は、労働者の人数や年齢層、入退社状況を把握するために利用されます。また、社会保険や労働保険等の手続きに必要な情報も含まれます。

賃金名簿

賃金名簿とは、会社で働いている労働者の賃金等の支払いに関する情報をまとめた帳簿です。

この帳簿には、基本給や残業手当、休日出勤手当、賞与等の支払いに関する情報が含まれます。また、各種社会保険料の計算に必要な情報も含まれます。

出勤簿

出勤簿とは、会社で働いている労働者が勤務した日付や勤務時間等を記録する帳簿です。この帳簿は、労働時間の管理や給与計算に利用されます。

また、労働時間の上限を超えないようにするためにも、出勤簿の作成が必要です。

法定三帳簿は、労務管理の基本的な帳簿であり、法律によって義務付けられています。適切に作成・管理することで、労働時間や賃金に関するトラブルを未然に防ぎ、労働環境の改善にもつながります。

労務管理の注意点

 

近年、企業において労務管理が重要視されるようになってきました。

労務管理には、法令や法律を遵守することや、生産性を高めることなどさまざまな要素が含まれます。以下では、労務管理における注意点を紹介します。

法令や法律を理解・遵守する

労務管理において最も重要なのは、法令や法律を理解・遵守することです。

労働基準法や労働安全衛生法など、労働に関する法令や法律は複雑であり、しっかりと理解する必要があります。

労働に関する法律は、時代や労働環境の変化に合わせて改正されます。

法改正に合わせた対応が求められることから、法律に関する知識を深めなければいけません。より迅速かつ正確な業務対応を検討するのであれば、社会保険労務士やマイナンバー実務検定などの資格取得を検討してみる、専門家に依頼することを検討してください。

万が一、法令違反によって企業が訴えられた場合、業務停止や賠償金の支払いなど、深刻なリスクが考えられます。法令や法律を守ることは、企業としての信頼性を高めるためにも重要なポイントといえます。

情報を厳重に管理する

企業における人事情報や給与情報など、労務管理に必要なさまざまな情報は、外部に漏れないように厳重に管理する必要があります。

特に、最近では紙での管理ではなく、データで管理することが主流となっています。そのため、サイバー攻撃による情報漏洩が増加傾向にあるため注意が必要です。

情報漏洩によって、企業の信頼性が低下するだけでなく、法的な問題も発生する可能性があるからです。情報の厳重な管理は、企業が果たすべき大切な責任といえるでしょう。

改善する意識をもつ

労務管理は、社員の健康管理や雇用形態の改善など、常に改善の余地が多くあります。環境の変化が激しい時代だからこそ、改善する意識を持つことは非常に重要といえるでしょう。

残業に対する考え方や働き方、ハラスメントの問題など、時代が進むにつれて考慮すべきことは増えています。

しかし、これらの労働環境の改善に取り組むことで、社員のモチベーションアップにつながり、生産性の向上に繋がることもあるため、メリットも大きいといえるでしょう。

また、女性や外国人など多様な人材を受け入れることで、企業の多様性も向上することができます。

労務管理には、常に改善の意識を持ち、積極的に改善に取り組むことが求められます。

生産性を意識する

生産性とは、単位時間あたりにどれだけの成果を出せるかという指標です。労務管理においては、生産性を向上させることが重要となります。

そのためには、労働者のスキルアップや労働環境の整備など、さまざまな施策が必要になりますが、生産性が向上すると企業の業績が向上します

さらに、従業員のモチベーションも高まるため、労務管理においては重要なポイントといえるでしょう。

労務管理は生産性向上とリスク回避のため

 

労務管理の基本と役割、注意点について解説しました。会社の経営において労務管理は欠かせません。人事管理と混同されがちですが、管理する対象が異なります。

従業員の生産性を向上させるために必要な対策を施すこと、そして安心して働ける体制を整えることが労務管理であり、組織を管理の対象とするのが労務管理といえます。

労務管理の業務内容を分解すると多岐に渡りますが、いずれも目的は生産性の向上とリスク回避のためです。労務管理をしっかり運用することが安定した会社経営に繋がるでしょう。

HRプラス社会保険労務士法人には、労務管理業務にも長けた、経験と知識が豊富な社労士が在籍しています。些細なことからでもぜひご相談ください。

労務DDのご相談ならHRプラス社会保険労務士法人までお問い合わせください。

関連記事