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公開日:2024.06.29

更新日:2024.09.02

上場(IPO)準備のスケジュール!上場までにやることとは?

会社の上場は苦労の連続です。多岐にわたる準備作業が必要不可欠となり、長い期間が必要になります。

この記事では、上場までのやるべきことをフェーズごとに解説していきます。

押さえるべきポイントややっておくべきことなど参考になれば幸いです。

上場準備の期間はどのくらい?

 

株式上場に至るまでの準備期間は少なくとも3年と言われます。内訳は上場前のIPO監査として上場直前2期分のIPO監査、そして経営管理体制が整ってからさらに1年間の運用が必須となります。

監査と運用の2つによって3年間の準備期間となるわけです。

 

企業が上場を果たすには、膨大な時間とコストをかけて様々な厳しい基準をクリアしなければなりません。日常業務をこなしながら上場企業としてふさわしい体制を整備し、さらには上場に向けた申請書類の作成を行う必要があります。

上場はさまざまな審査や監査を経てようやく申請まで辿り着けます。

よって多くの協力を得ながら着実に準備作業を進めることが大切です。

関連記事:上場(IPO)準備に必要な労務監査とは?確認したい労務リスクを解説

 

上場までの流れ

IPOは準備が大変だと言われますが、どのように大変なのでしょうか。

上場するまでの期間は「IPO準備期間」と「申請期」に分かれます。

さらに上場準備のスケジュールは、体制構築期間を「直前前々期(N-3期)」、管理体制の整備・運用期間を「直前々期(N-2期)」、上場会社と同様の試運転期間を「直前期(N-1期)」、本格運用期間を「申請期」と分けて考えます。

以下は上場を達成するまでの準備期間の流れになります。

 直前々期期首以前(N-3期)

まず上場までの事業計画と資本政策を策定して、社内にIPOプロジェクトチームを設置し社内規程を整備します。また、監査法人によるショートレビューを受ける必要があります。

最近では監査法人がすぐには決まらないことも多いので、早めに選定しておきます。

直前々期(N-2期)

直前々期は会計監査が始まります。上場会社としての管理体制を構築する期間となります。

ショートレビューの結果を基に問題や課題を洗い出し、直前期に向けて社内の管理体制や内部統制報告制度(J-SOX)に着手し始める時期です。

直前期

直前期は上場企業としての試運転期間です。上場審査の基準となる年度でもあり、主幹事証券会社による審査が始まります。

上場申請の最終準備も同時進行します。IPO準備期間においてもっとも重要な期間となります。

申請期

上場準備の最後の関門です。申請期では上場申請を行いますが、証券取引所に上場申請をする前に、主幹事証券会社による引受審査を受けます。

この審査では多くの質問事項があり、速やかに回答する必要があります。

参考:新規上場基本情報 | 日本取引所グループ

期間ごとに見る上場前に準備すること一覧

 

準備期間の流れを把握したところで、それぞれの期間でのやるべきことを細かく見ていきましょう。

準備開始段階から上場のためにすべきことは膨大にあるため大変な道のりです。よって綿密なスケジュールを立てて上場に挑む必要があります。

直前前々期首以前(N-3期)

上場を成功させるためには、早いタイミングで準備を進めておくことが重要なカギとなります。同時に、上場に必要な管理体制を構築することが求められます。

直前前々期(N-3期)に行うべきTo Do リストは、以下のとおりです。

  • 監査法人の選定
  • ショートレビューの実施
  • プロジェクトチームの編成・タイムスケジュール設定
  • 主幹事証券会社の選定
  • 事業計画・資本政策の策定
  • IPOコンサルタントの選定

 

◆監査法人の選定

上場を目指す上で、監査法人から直前々期(N-2期)および直前期(N-1期)の証明書をもらう必要があります。そのため、3期前には監査法人の選任が必要となります。

最近では、監査法人が見つからず監査が受けられない会社が増加しているので、早めに選定を始めましょう。

ショートレビューの実施

監査法人の選定後に、ショートレビュー(予備調査)を受けます。ヒアリングや資料レビュー等の実地調査を行い、上場のために必要な問題点を洗い出して、指摘事項の改善案を明確にしておきます。

報告内容は、主幹事となる証券会社にも共有されます。

◆プロジェクトチームの編成・タイムスケジュール設定

ショートレビューで受けた課題の解消に取り組むため、社内でプロジェクトチームを編成します。専任のプロジェクトチームで企業の内部課題を解決していくことで、IPO準備によって現場への膨大な作業と負担を抑えることができます。

上場までのタイムスケジュールも策定します。

◆主幹事証券会社の選定

主幹事証券会社は、過去の上場経験で得た様々なアドバイスをしてくれる重要な存在です。

その中でも全体的な作業の運営やスケジュール管理など、中心となって進めてもらえる幹事証券会社を「主幹事証券会社」と言います。

◆事業計画・資本政策の策定

資本政策とは事業計画を達成するための資金調達及び株主構成計画です。関係機関は企業が立てた事業計画を精査して、今後の方針を決定します。上場には事業計画と資本政策の策定が命といっても過言ではありません。また、資本政策は一度決めてしまうと後戻りできないので、慎重に進める必要があります。

◆IPOコンサルタントの選定

IPOコンサルタントは、上場に関する専門的な知識や経験が豊富です。専門家によるアドバイスが受けられ、時間コストの削減が可能になります。

コンサルタントの依頼は必須ではありませんが、社内に知見が足りなければ必要な作業を請け負ってくれる心強い味方になります。

関連記事:労務デューデリジェンス(労務DD)とは?チェックリストや費用も解説

直前々期(N-2期)

直前々期(N-2期)では、IPO外部監査が始まります。ショートレビューの実施、内部管理体制の整備を構築し、上場企業としてふさわしい体制づくりに着手する期間です。

上場審査では、会社が利益を生み、株主に利益を還元する構造を有しているか、また経営管理制度の整備ができているかを確認します。経営管理制度は、原則1年間の運用が求められています。直前々期(N-2期)に行うべきTo Do リストは、以下のとおりです。

  • 利益管理制度の整備
  • 業務管理制度の整備
  • 組織運営体制の整備
  • 会計制度の整備
  • 特別利害関係者等との取引解消
  • 関係会社の整備
  • J-SOXへの対応
  • 会計監査への対応
  • 主幹事証券会社、監査法人とのミーティング

◆利益管理制度の整備

上場審査の中で最も重要な項目のひとつが、利益管理体制の整備です。一般に利益管理体制を構築するにあたり、中期事業計画を策定しながら、予算管理制度、月次決算制度の構築が求められます。

◆業務管理制度の整備

業務管理体制の整備は重要な審査項目のひとつなので、早期に整備して準備する必要があります。販売管理や購買管理をはじめとする各業務の管理体制を構築していきます。

企業としての利益を確保していくために、業務を適切に管理する体制を整備する必要があります。

◆組織運営体制の整備

上場企業になるためには、組織として機能する体制を再構築する必要があります。機関設計や組織体制、内部監査を行う部署の設置、稟議制度、社内規程のルール整備などが挙げられます。

◆会計制度の整備

商品やサービスごと、顧客ごとに原価と利益を集計する制度を構築していきます。複数の部門がある場合には、部門別に損益計算を行います。

上場には、株主や投資家等、外部の利害関係者にとって有用な情報を提供するため、法律や制度に基づく会計処理が必要です。

 

◆特別利害関係者等との取引解消

上場するためには、利益相反取引に違反しないような組織体制の見直しも必要となります。

社外役員の取り入れや、利益相反取引に違反しないように特別利害関係者等との取引を解消するなど、必要に応じた役員の選解任、組織体制の見直しも必要です。

◆関係会社の整備

上場時に関係会社の整理が必要なのは、株主への信頼や利益を守るためです。不要な関係会社を合併・売却するなどして、効率的・合理的な運営体制を整える必要があります。関係会社の管理体制が整っていることも、上場審査におけるポイントです。

◆J-SOXへの対応

J-SOXとは、上場企業における財務報告の信頼性の確保を目的とした内部統制報告制度を言います。上場企業は不正会計などの防止のため、事業年度ごとに監査を受け、有価証券報告書と一緒に内閣総理大臣へ提出しなければなりません。そのため、J-SOXに対応した仕組みの構築が必要となります。

◆会計監査への対応

上場には、上場申請直前期以前の2年間分の財務諸表の監査が必要です。また直前前々期で実施したショートレビューで受けた指摘を確実に改善しておかなければなりません。改善状況次第では「不適正」となるおそれもあるので、なるべく早くに対応をしておくことが重要です。

◆主幹事証券会社、監査法人とのミーティング

選定してきた上場準備会社(IPOコンサルタント)、主幹事証券会社、監査法人によるミーティングを定期的に実施して情報共有を行い、必要事項についてコンセンサスを得ておくべきでしょう。

また、ミーティングで受けた助言を実行しましょう。

直前期(N-1期)

直前期はIPO準備期間において最も重要な期間です。すでに上場会社と同等の体制整備は完了しており、直前々期から引き続き体制を運用していくことになります。上場会社と同様の運用がなされ、社内管理体制の整備を完了させておかなくてはなりません。

また上場申請などの最終準備も同時進行します。直前期(N-1期)に行うべきTo Do リストは、以下のとおりです。

  • 経営管理体制の運用
  • 事業計画・資本政策の見直し
  • 申請書類作成

◆経営管理体制の運用

これまで構築・整備したさまざまな管理体制を1年通して完全に運用することが求められます。不備がある場合は、速やかに改善する必要があります。監査法人も適切に運用されているかについて監査を実施します。利益目標に対して経営利益がどの程度達成されているかが見られます。

◆事業計画・資本政策の見直し

申請期には、上場審査に向けて主幹事証券会社の引受審査、証券取引所が執り行う上場審査を受けるため、状況によっては事業計画と資本政策の見直しを図る必要があります。IPOコンサルタントなどの意見も聞きながら、必要に応じて対応していきます。

申請期

最終段階となる申請期はいよいよ上場を申請する年です。引き続き、これまでの体制を継続しての運用が求められます。全ての申請書類を完成させ、証券取引所の本審査に先だって、主幹事証券会社による引受審査が行なわれます。引受審査を通過した後、上場申請を行います。

申請が受理されたら、証券取引所に上場申請を行います。

審査を経て上場承認がおりると、晴れて株式上場の達成です。申請期に行うべきTo Do リストは、以下のとおりです。

  • 主幹事証券会社による引受審査
  • 定款の変更
  • 上場申請
  • 証券取引所による上場審査

◆主幹事証券会社による引受審査

上場申請に先だって、主幹事証券会社による引受審査が行われます。主幹事証券会社が、日本証券業協会が定める「有価証券の引き受け等に関する規則」に基づき、さまざまな角度から信頼できる企業かを審査します。

◆定款の変更

上場会社になるにあたり、公開会社になるための株式の譲渡制限の撤廃、株主名簿管理人の設置、公告方法の変更、会計監査人、監査役会の設置、単元株制度の採用など、定款の一部を変更する必要が生じます。定款を変更するには、株主総会の特別決議が必要です。

◆上場申請

定款を変更した後に、取締役会の決議を経て上場申請書類を証券取引所の上場審査部へ提出します。

◆証券取引所による上場審査

上場申請後に証券取引所による上場審査が始まります。上場審査基準に基づき、上場会社としての上場適格性を満たしているかを判断します。上場審査は、他の審査よりも質問事項が多岐にわたり、想定外の質問への対応力も見られます。審査は通常2〜3ヶ月を要します。

審査を通過すると、ついに上場の達成となります。

まとめ

今回は上場までの大まかなスケジュールをご紹介させていただきました。上場をするためには数年単位での膨大な準備が必要となります。そのため、準備スケジュールを把握し、計画性をもって取り組むこと、先を見据えて余裕をもって準備を進めていくことが肝要です。

労務DDのご相談ならHRプラス社会保険労務士法人までお問い合わせください。

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