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公開日:2024.06.29

更新日:2024.09.24

株式上場(IPO)前の最初に必要な準備は?

 

​​IPO前、最初に準備すること

 

株式上場に至るまでに、少なく見積もって3年前後の期間を要します。株式上場上場申請を行う3年以上前に意思決定と上場審査を通過するために必要な体制整備など上場準備を行います。

最初の準備期間を、直前々期以前(N-3期以前)と言います。主な作業としては、会計監査を受けるために監査法人や主幹事証券会社の選定に始まり、 IPOコンサルタントの選定、プロジェクトチームの編成、経営管理体制ほかグループ会社や関係会社の整備・改善を実施します。

IPOの準備では、はじめの一歩が肝心です。上場をスムーズに行うには、必要な時期にやるべきことをクリアしていかなければなりません。1つ1つ準備をこなしていくためには、外部の関係機関の協力なしでは進められません。

特に証券会社と監査法人は、上場に不可欠なパートナーであり、IPOの成否の運命を決めるキーマンでもあります。

直前々期以前(N-3期以前)は、直前々期〜申請期までに対応事項がスムーズにこなしていけるようにしっかり準備万端に整えておく時期と考え、下記の事項を主に行っていきます。

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株式上場(IPO)の意思決定

上場はメリットが注目されがちですが、デメリットもありますので、社内で上場することの是非について十分に考慮したうえで進めることが重要です。

最初の意思決定の後にIPO準備が始まります

その最初の準備期間を直前々期以前(N-3期以前)と呼びます。

 

監査法人の選定

まずは監査法人によるショートレビューを受ける必要があります。これは会社が上場を果たすまでに解消しなければならない課題の改善や内部管理体制の整備・運用を洗い出すものです。

上場するためには監査を受けることが必須条件なので、その前提としてショートレビューを受けることが必須条件となります。

 

主幹事証券会社の選定

全体的な作業の運営やスケジュール管理などを中心となって支援を進めてもらえる幹事証券会社を「主幹事証券会社」と言います。主幹事証券会社は、上場準備から株式上場後も関係が続き、一歩踏み込んだやりとりをするため、信頼関係が絶対となる重要な存在です。

監査法人が決まってから早い段階での主幹事証券会社を決定しておくと良いでしょう。

 

IPOコンサルタントの選定

IPOコンサルタントは、上場準備に必要なアドバイスを行う専門家です。費用コストを抑えながら、IPO準備の時間を短縮することが可能になります。準備期間だけではなく、上場後のサポートを行ってくれます

IPOコンサルタントを選ぶポイントは、支援実績、関係機関とのネットワーク、得意とする分野、価格などを調べて決定しましょう。

 

プロジェクトチームの編成

上場準備を進めるために、社内主要部門の実務担当者でプロジェクトチームを結成し、全社的な協力体制を整え上場までのタイムスケジュールを策定します。

ショートレビューで受けた是正事項を各部門の代表者が直接携わることで、現場の負担も削減され対応もスピーディになります。

 

グループ会社・関係会社の整備

上場審査では、株主の利益を保護する観点から企業グループが事業を公正かつ忠実に遂行しているかどうかの確認がされます。関係会社の整備とは、関係を今後も続けるのか、あるいは解消するのかを決定することとなります。

申請予定事業年度の2期前は、上場審査に耐えられる体制を構築する必要があります。したがって上場準備の早い段階で進めておく必要があります。

 

IPOを達成するまでの流れ

 

上場までのおおまかなスケジュールを把握しておくことで、上場までの流れが掴め、IPO準備をスムーズに進められます。

上場までには大まかな流れとしては、決算期に従って直前々期以前(N-3期)、直前々期(N-2期)、直前期(N-1期)、申請期(上場)となります。

直前々期以前では、IPOに必要な管理体制を構築することが求められます。直前々期ではIPO監査が始まります。社内体制や規定を整備し、基盤を作る時期となります。直前期では、上場会社と同様の管理体制を運用することが求められます。

申請期では、直前期の体制を継続して運用することが求められます。最後の難関「証券取引所による上場審査」が行われます。

それぞれの期間でどのような内容を進める必要があるか確認していきましょう。

 

直前々期以前(N-3期)

IPOを予定する時期から遡って3期以上前に会社としてIPOすることを意思決定し、IPO準備を開始することになります。

まずはIPOコンサルタントを選定し、上場準備の全体像とスケジュールを把握します。監査法人によるショートレビュー(予備調査)を受け、企業の現状や解決すべき課題を洗い出します。社内プロジェクトチームを編成し、上場準備をスムーズに進められる体制を作ります。

主幹事証券会社の選定もこの時期が良いとされます。

 

直前々期(N-2期)

2年後の上場に向けて、前期までに策定した事業計画及び資本政策、ショートレビューの結果等を基に上場準備を本格始動する時期となります。

上場を申請するには、過去2期分監査法人による監査証明書が必要となるため、直前々期から監査が始まります。期初に監査法人による調査をうけ、各種規程の整備や見直しなど、前年度のショートレビューで指摘されたガバナンス体制が改善されているかを確認します。

この時期は、上場会社と同等の組織として機能する体制整備を構築し運用できる段階に入っていることが求められます。

また、内部統制報告制度(J-SOX)への着手、主審査に向けて各種申請書類の作成準備を進めます。

 

直前期

上場申請を行う期の1期前の直前期は、試運転期間の位置づけです。体制整備は完了しており、直前々期から引き続き経営管理体制を運用する期間です。

監査法人や主幹事証券会社の指導を受けながら、取締役会などの運営体制、会計管理、労務管理、社内規則の徹底やJ-SOX(内部統制報告制度)への対応、ディスクロージャー体制など、必要なルールや体制が整っているか改善しながら実績を積みます。状況によっては、事業計画や資本政策などを見直すことも大切です。

また、上場申請などの最終準備を同時進行します。IPOの申請書類は、事業説明書や財務状況・経営成績説明書など、数百ページにも渡る書類で、作成に膨大な時間を要します。

関連記事>>労務管理とは?労務の基本と注意点を徹底解説

 

申請期

上場に向けた準備がいよいよ最終段階を迎える期間です。引き続き上場会社と同様の運用を継続しながら、申請書類等一式を最終的に完成させ、証券取引所へ上場申請を行います。上場申請の前に、まずは主幹事証券会社による引受審査を受け、クリアしなければなりません。

上場には、主幹事証券会社等が公募株式を委任することになるため、売り出しできるか、事業の成長性、内部統制やコンプライアンスは適切かどうかなどが審査されます。

証券取引所へ上場申請後は、申請書類に基づいて質問及び実地調査が行われます。書面やヒアリングによるさまざまな質問事項に回答しなくてはなりません。

取引所の上場審査にはおおよそ2〜3ヶ月かかります。申請が承認されるとついに新規上場となります。会社が上場すると株式譲渡制限を外して公開会社になるので、定款を変更する必要があります。

関連記事:上場(IPO)準備のスケジュール!上場までにやることとは?

 

 

IPOにかかる費用

 

株式上場には多額の費用がかかります。IPOの準備期間にかかる年間の費用は、一般的に最低でも5000万円と言われています。

また、IPOまでの期間が長引くほど費用は余計にかさみます。さらに上場時に発生する費用として、上場審査料や新規上場料などが挙げられます。

そのほか、登録免許税が課税されます。上場後に継続的に生じる費用として年間上場料があります。金額は市場や上場時の時価総額によって異なります。

上場を考える場合には、上場準備期、上場時、上場後に生じる費用を理解しておくことが必要になり、資金面でも計画的に準備を進めていくことが必要です。株式を市場へ上場するまでには、主に以下の費用が発生します。

 

上場審査料及び上場審査料

新規上場申請者は、上場申請日が属する月の翌月末までに、上場審査料を支払う必要があります。審査を通過するか否かにかかわらず、必ず上場審査料を支払わなければなりません。

また、新規上場時には新規上場料が発生します。上場審査料と新規上場料は、上場先の市場によって異なります。各市場の上場審査料と新規上場料は以下のとおりです。

上場審査料

  • プライム市場:400万円
  • スタンダード市場:300万円
  • グロース市場:200万円

新規上場料

  • プライム市場:1,500万円万円
  • スタンダード市場:800万円
  • グロース市場:100万円

参考:日本取引所グループ|上場料金

 

登録免許税

登録免許税とは、会社の登記の際に課税される税金です。資本が増加した際にも登記が必要になるため、資本金によって登録免許税が変化します。具体的な計算方法は資本組入額×0.7%で税額を計算することができます。

資本組入とは、会社の損失等の不測の事態に備えて、会社で予め積み立てておき、資本準備金の一部を資本金に組み入れることをいいます。

参考:国税庁|登録免許税の税額表

 

IPO各プレイヤーへの報酬

IPOは、外部の専門機関による多くの協力と支援があって実現されます。

一般的な企業が外部機関に支払う費用として、監査法人の監査費用に数百万〜数千万円程度(1事業年度)、主幹事証券会社の上場準備手数料に年間500~600万円、主幹事証券会社の成功報酬500万円(上場実現時)、コンサルティング会社に年間500〜1,500万円程度がおおよその目安です。

 

まとめ

 

IPOには、綿密な計画と費用、長期間にわたる準備が必要で、多くの外部関係者との調整・整備など、多岐にわたる作業が必要となります。

IPOまでに必要な期間と費用について把握し、計画性をもって着実に取り組むことが大切です。

労務DDのご相談ならHRプラス社会保険労務士法人までお問い合わせください。

コラム監修者

特定社会保険労務士

佐藤 広一(さとう ひろかず)

<資格>

全国社会保険労務士会連合会 登録番号 13000143号

東京都社会保険労務士会 会員番号 1314001号

<実績>

10年にわたり、200件以上のIPOサポート
社外役員・ボードメンバーとしての上場経験
アイティメディア株式会社(東証プライム:2148)
取締役(監査等委員)
株式会社ダブルエー(東証グロース:7683)
取締役(監査等委員)
株式会社Voicy監査役
経営法曹会議賛助会員

<著書・メディア監修>

M&Aと統合プロセス 人事労務ガイドブック』(労働新聞社)
図解でハッキリわかる 労働時間、休日・休暇の実務』(日本実業出版社)
管理職になるとき これだけはしっておきたい労務管理』(アニモ出版)他40冊以上

TBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』監修
日本テレビドラマ『ダンダリン』監修
フジTV番組『ノンストップ』出演

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